水どころ山口の名水。美味しい水は歴史とともに

環境省の前身、環境庁では日本全国の清澄な水の紹介と保護などを目的に、昭和60年に全国各地100か所の湧水や河川を「名水百選」として選定しました。
山口県からは、美祢市の別府弁天池湧水、岩国市の桜井戸、寂地川の3か所が選ばれました。
「別府弁天池湧水」は、透き通ったブルーが神秘的で美しい湧水池です。良質でまろやかな水質の「桜井戸」は、初代岩国藩主吉川広家をはじめ多くの茶人に愛されてきました。
「寂地川」は錦川の支流宇佐川の最上流で、飲料用に加えわさび栽培にも利用されています。

また、環境省は平成20年に「平成の名水百選」を選定しました。
そちらには萩市の三明戸湧水・阿字雄の滝(大井湧水)、周南市の潮音洞・清流通りが選定されています。

「三明戸湧水」も「阿字雄の滝」も、阿武火山帯の羽賀台を水源としている湧水です。
柱状節理が見事な阿字雄の滝の小庭園は、雪舟の手によるものだとか。毛利公も観瀑の催しを行ったと記録が残っています。
「潮音洞」は、1651年に岩崎想左衛門重友が水不足の窮状を救うため私財をなげうって作った水のトンネルです。
約90メートルもの岩盤をノミとツチだけでくり抜く工事は困難を極めましたが、今でも漢陽寺境内の日本庭園を巡り「清流通り」へと流れ出る水は、荒地を田畑に変えていきました。

ホテル喜良久のある山口市では、かつて「藤の下水」「柳の水」「朧の清水」が山口三名水と呼ばれていました。
水道の発達した現在では利用されることもなくなりましたが、その跡地に建てられた祠などは大切に残されています。
そのほか、山口県内では現在でも地元の人に利用されている湧水がたくさんあります。
美味しい水は、古来より人々の生活を潤してきました。
各地の湧水の背景にある歴史に目を向けながら訪ね歩いてみるのも、面白いかもしれません。